尊厳死とは。欧米と日本とでは意味が微妙に違うようだ

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かねてから自らの尊厳死を予告していた米国の女性が、11月1日に命を絶ったようです。
参考 「11月1日に死ぬ」と宣言のオレゴン州女性が死亡|産経ニュース

この件、欧米では随分と議論を呼んだようですが、それもそのはず。件の本人には何ら悪気はないのは分かりますが、そうは言っても、やはりこういう話題は自分だけの問題ではないものだと思います。今回の選択は、もしかしたら世の中の多くの、何かしらの障害を持っていたり介護を必要として生きていたりする人たちに対して「自ら死を選択させる」ような無言の圧力になってしまっているかもしれません。

優しい人ほど圧力を感じやすい

「この人は立派ね。周りに迷惑を掛けないために、自ら命を絶つんですから」
ほんとに何の悪気もなく言ってしまいかねないこんな発言が、もしかしたら私たちの周りにいる誰かに対して死を選択させる非常に強い圧力を秘めているかもしれません。

軽度・重度にかかわらず家庭内で虐待を受けている子どもなんかは「僕は死ぬべきなのかもしれない」とか考えてしまいかねません。日々の生活に人の手を借りる必要がある人も、乙武さんみたいに稼ぎがある人は少し話が違うかもしれませんが、生活保護や助成金などのお金で介護費も賄っている人であれば、人のいい人ほど「自分は死ぬべき存在だ」と考えてしまいかねません。

「尊厳死」というものの捉え方の違い

今回の件、個人的には単なる自殺ほう助ではないかと感じています。日本の尊厳死協会などが定義している尊厳死や安楽死の概念に照らしてみてもやはり今回の件は尊厳死とも安楽死とも言えないものなので、もしかしたら日本人の死生観に照らしてみるとそう解釈できてしまうのかもしれません。

ニュースでは今回の件を尊厳死、尊厳死、と当たり前のように欧米の考える尊厳死の定義そのままに尊厳死扱いしていますが、少なくとも日本における尊厳死の考え方(定義)は次のようなもののはずです。

尊厳死とは、患者が自らの意思で、延命治療を行うだけの医療をあえて受けずに死を迎えること。
参照 尊厳死(そんげんし)|独立行政法人国立国語研究所「病院の言葉」委員会

要するに、今回の件では欧米の価値観に従うと「自分の死期を自分で選択する」ことが人としての尊厳を保つことにつながると解釈している印象ですが、日本的価値観だとそれだけではただの自殺と大差ないのです。

日本的価値観における尊厳死とは、分かりやすく極論を言えば「人間らしく生きることができない状態になってまでただただ延命治療を続けるということを拒否し、延命治療の中止や死期を自ら決める」ことが尊厳死にあたります。「どうせこの先私はおかしくなっちゃうんだから、強い症状が出ていない今のうちに死んでおきたい」は日本的価値観の下では尊厳死とは言えない、わけです。

では今回の件は安楽死なのか?というと、そうでもないのです。というのも、安楽死とはつまり『苦痛を長引かせないことを主眼において、人為的に死なせる』ことを言うからです。目の前で大切な人が苦しそうにもがいていたら、「もうこれ以上苦しませるのは可哀想だから、死なせてあげたい」と思うかもしれませんよね。そこで、たとえば薬などを用いて死期を早めてやったりすることが、少なくとも日本国内で安楽死と言われるもののそれです。

今回の件は「積極的に死期を早めた」という点では安楽死的な部分もありますが、でも苦痛を長引かせないことに主眼を置いているかというと、そうとも言い切れない部分が多分にある。だから尊厳死という言葉が日本のメディアでも使われたのだと思います。

安楽死や尊厳死を法で定めるのは難しい

今回の件のような「周りの人に迷惑をかけたくない」という思いは紛れもなく純粋に美しいものだと思いますが、だからこそ難しいものがあります。それが当たり前の選択として行われるようになれば、いずれ遠からず「あなたもあの人のように美しくあれ」という無言の圧力が他の人にも加わってしまうようになるのは必至だからです。

「じゃあ本人に強い苦痛がないうちは死を選択できないような法にすればいい」とも思ってしまいそうですが、そうはいっても、精神的な苦痛だって無視できるようなものではないし。とはいえ精神的に苦しいからなんて理由をOKにしていたらそれはそれで何でもアリになってしまうし。そんなでは単なる自殺だって安楽死や尊厳死と呼ばれ市民権を得るようになってしまう可能性もあります。


この話題は今後の社会においてますます注目が高まっていくことと思いますから、折にふれて多くの人が自分で考え、一部の声の大きい人の意見だけが通ってしまうようなことにならないようにしないといけないな、と思います。

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